2015年2月9日月曜日

国際技術委員会の委員長に就任・ACからのプレッシャー編


金野が技術委員会(Specialist Committee、SC)の委員長になるまでの話をこれまで書いてきましたが、技術委員会は上位の委員会(Advisory Council、AC)から仕事(Terms of Reference、TOR)を与えられて、それを3年かけて実施するのが通常の流れです。前期もそのように実施してきました。

しかし今期は、われわれの委員会だけ通常とは違う手順で進むことになりました。
最初の1年程度で、われわれSCからACに対して、自分たちの仕事を逆提案します。ACはそれを検討し、改めてTORを決めます。SCは残りの2年間、そのTORに基づいて仕事をします。

これは前期の終盤のごたごたが関係しています。
TORは公開されているので誰でも読むことができます。そこにばっちり書いてありますが、前期のIce委員会は終盤に前委員長が急に辞任し、ガイドライン(性能試験の実施方法の緩やかなルール)の改訂が受け入れられず、たくさんの成果を残したとは言えない状況でした。
(ここに関してはいろいろ言いたいことがありますが、自粛しておきます。)

そこで今期は、ACがわれわれのSCの活動をこれまで以上にサポートすることになっています。(監視の意図もあると思います。)また、最初の年にこちらからTORを提案し、ACの承認を受けます。

とはいえどんなTORを提案してもよいわけではなくて、Task 1~3が決まっています。

Task 1: 平坦氷に関連した既存のガイドラインのレビューと改訂の提案
Task 2: 複雑氷に関連した…(以下おおよそ同じ)
Task 3: マネージドアイス中構造物に関するレビューとベンチマークの提案

最後の「マネージドアイス」というのは、大きな氷が構造物にぶつかってくると困るので、それを砕氷船等で小さく砕いた状態のものを指します。

昨年9月の総会で、ACの委員でTORの変更を提案した人と、長時間に亘って議論しました。
こちらの言い分もいろいろ言いました。またこの人を含め、われわれの委員会を担当するACのワークグループ(WG1)全員と打ち合わせました。皆、協力を約束してくれました。

自分は、いかにも日本的な(?)立ち回り方をしている気がします。筋を通して、根回しして。委員長らしく活動していると言えるのでしょうか。
こういう動きが得意なわけじゃないんですが、こっちは初めての国際委員会の委員長だし、向こうはベテランです。懐に飛び込んで、本音で語ったほうがいいだろうと感じました。
しかしこのやり方が国際委員会で通用するものなのかどうか。任期の3年間で、それが見えてくることと思います。

今月(2015年2月)に、第1回の委員会を開催しました。この話は次の記事で。

2015年2月6日金曜日

国際技術委員会の委員長に就任・総会での出来事編


推薦されるまで編の続きです。

金野は日本から国際技術委員会の委員長に推薦されたが、金野よりベテランで、水槽を持っている組織に所属しており、押し出しもよく英語も話せる委員がほかにいる、という話を前の記事に書きました。金野はよくて第2候補、実際にはもっと下位の候補だっだと推測しています。

しかしながら、2014年9月のITTC総会で、金野は委員長になっちゃいました。

これにも理由があって、委員のノミネートにトラブルがあって、委員長候補だと金野が思っていた人物が、そもそも委員に推薦されなかったからです。(おい!)
委員に推薦されなかったら、委員長になるわけがないよねぇ。

ITTCには大雑把に分けて3種類の構成メンバーがいます。地域を代表する人(日本代表とか、北ヨーロッパ代表など)、曳航水槽を所有する組織の代表、そして金野のような技術委員です。
(この文章は正確ではありませんが、実態をおおよそ反映しています。)

ITTCの北ヨーロッパ地域の代表は、技術委員の候補を組織代表にメールで問い合わせたらしいのですが、組織代表が定年退職したとか転職したなどの理由で、いくつかの組織ではそのメールを受け取った人がいなかったのだそうです。

ノミネートされなかった委員はフィンランド2組織の2名。どちらも前期の委員会で活躍した実力者です。この二人が委員会から抜けると痛い。
彼らを何とか委員にねじ込むことが、その時点ではまだ委員長に就任していなかった金野の、28期の最初の仕事になりました。

二人が委員候補リストにノミネートされていないことが分かったのが、総会最終日の前夜。慌てて本人に連絡し、意思を確認。二人とも委員を継続する意志があったので、次に北ヨーロッパ代表に会って、委員の追加をお願いしました。

北ヨーロッパ代表から言われたのは、「組織からの推薦が要る」。それと「12時からの会議に間に合えば入れられる。」
それを言われたのが、総会最終日の朝10時過ぎでした。

いやーメールというものがあってよかった。
焦る気持ちを抑えながら委員候補にメールして、組織代表に連絡を取ってもらいました。また、一方の組織は日本の委員が組織代表を知っていたので、その委員からもメールで依頼してもらいました。
11時過ぎぐらいに、何とか推薦状のPDFファイルが手に入りました。総会の会場受付に走って印刷してもらい、会議直前に北ヨーロッパ代表をつかまえて推薦状を渡しました。
同時に、日本代表の先生にもバックアップを依頼。

いまメールを見返してみても、よく間に合ったなぁと幸運に感謝する気持ちになります。
その節は日本の委員の方々にお世話になりました。いまさらではありますが御礼申し上げます。

というわけで二人の候補者はめでたく委員になり、金野もめでたく(?)委員長に就任した、というわけなのでした。

この他にもカナダの委員のノミネートの齟齬があり、それをカナダの組織代表に話して南北アメリカの地域代表と相談してもらうなど、委員長らしく暗躍(?)しました。

話が長くなりましたが。

金野が委員長になったのは、上記のようにいろいろな思惑や偶然が重なった結果です。実力や実績では、金野より優れた委員が入っています。
金野ができることは、上位の委員会と連絡を密にし、丁寧に委員会を運営して、できるだけ実りのある結果を得られるように、委員に働きかけていくことぐらいでしょうか。

実はITTC総会の場で、上位の委員会(AC)からプレッシャーをかけられました。
この話は長くなりそうなので、稿を改めます。

2015年2月5日木曜日

国際技術委員会の委員長に就任・推薦されるまで編


昨年の11月から更新していませんでした。忙しさにかまけて。
昨年の反省もありますが、まずはここ数日のことを。

2月3日と4日に、ITTC Specialist Committe on Iceの会合を主催して、外国人の委員を相手にいろいろ議論しました。

このブログには書いていませんでしたが、昨年9月にコペンハーゲンで開かれたITTC総会で、Specialist Committee on Iceのchairに任命されました。日本語に直訳すると、氷の専門家委員会の委員長です。
(ITTCのCommittee Membersのページに記載されています。)
専門家委員会と言うとピンとこないので、説明するときは「国際技術委員会の委員長のことだ」と言っています。

なおITTCというのは、International Towing Tank Conferenceの意味で、直訳すると国際曳航水槽会議となります。(国際試験水槽委員会、と訳されることが多いですが。)船舶の性能試験の方法を議論したり、ルールを決めたりします。

はじめに、委員長になった経緯を書いておこうと思います。

「国際技術委員会の委員長」というと、なんか立派な感じがしますね。実際、昨年の9月に参加したITTC総会で出会った他の技術委員会の委員長たちは、押し出しが良く、英語もペラペラ、プレゼンテーションも総じて上手で、できるビジネスマンという感じの人たちでした。

なのに俺かよ。

…それにはわけがあります。

金野は2011年(第27期)からITTCの技術委員を務めています。通常は、曳航水槽と呼ばれるプール形状の実験設備を持っている組織から委員が出るのですが、うちの大学は曳航水槽を持っていないので、そもそも委員になるのが不自然ではあります。たとえば海上技術安全研究所やJMUには氷海試験水槽があるので、そちらから委員が出るのが自然です。実際、どちらの組織にも金野より適任だと思われる、実験に詳しい方が所属しています。

ではなぜ金野が委員になったかというと、海技研とJMUに委員を出すのを断られて、他に人がいなかった、というのが実態です。恩師から話が回ってきて、悩みましたが、いくらかでも日本の(業界の)役に立てるかと思い、引き受けて、3年間務めました。
日本でも委員会を開いたりしました。)

ITTCの委員は、通常は2期(6年間)務めます。金野もあと1期は義務だと思っていました。
昨年、日本から次の期の委員を出すための会議がありました。金野は委員候補に入り…そこまでは想定どおりだったのですが…「委員長候補」として推されることになりました。

え。なんで。

「日本のプレゼンスのため」だそうです。
(ここは議論があるところだと思います。金野もちゃんと理解しているとは言い難いです。)

貨物船などの船舶は国境を越えて運航されるので、国際的なルールに則って設計・製造・運用される必要があります。だから性能試験方法を議論するITTCは、日本の造船業界にとってはときに重要な意味合いを持つ場合があり、蔑ろにできません。
そこで、ITTCの中で日本が存在感を示すために、委員長を出せるなら出したい。そういうことのようです。

ではほかの委員会の委員ではなく、なぜ氷の委員を委員長に推薦するのか。

前期の委員長はドイツ人でした。金野はそれなりにがんばって委員会に出席し、仕事をしてきたつもりです。
それが評価されたのか、はたまた東京での会議の夜にしゃぶしゃぶを食べさせた印象がよかったのかは分かりませんが、金野は前委員長から「次期委員長の候補である」という推薦を受けていたのだそうです。そこで日本代表が金野を委員長に推薦することにした、というわけです。

…というとかっこいいですが、金野は前委員長が前の委員の多くを委員長候補として推薦したに違いないと思っています。
なぜかというと、金野よりベテランで、水槽を持っている組織に所属しており、押し出しもよく英語も話せる委員がほかにいたからです。金野はよくて第2候補、実際にはもっと下位の候補だっだと推測しています。

しかしながら、2014年9月のITTC総会で、金野は委員長になっちゃいました。

ここにも裏話があるのですが、長くなったので稿を改めます。