お問い合わせになる方は,事前にこの記事をお読みいただけると幸いです.
1.金野はキャビテーションの研究から,10年以上離れています.
金野がキャビテーションの研究に関わったのは,2000年までです.2001年からポスドク研究員として氷海技術に関わる研究プロジェクトに傭われ,キャビテーションの研究から離れました.
現在はキャビテーションの研究をしておりません.
なお,キャビテーションの入門的な知識は,下記のページにまとめてあります.
研究テーマ: キャビテーションによる壊食現象
2.金野が学んだ「キャビテーション」とは,流れの中で圧力低下によって液相が気相に変化する現象です.
(上記の定義を,説明の便宜上「定義1」と呼びます.)
一部の書籍では,空中から水中になにかが投げ入れられたり,飛び込んだりしたときに,水中に気泡が観察される現象を(も)「キャビテーション」と呼んでいるものがあるそうです.
(「定義2」と呼びます.)
またいずれにせよ,金野は定義2で示される現象の専門家ではありません.ですので定義2のような現象についてお問い合わせいただいても,適切な回答ができないと思います.
3.観察される現象が,上記の「定義1」と「定義2」のどちらなのかを見分ける方法は?
定義1,2のどちらの現象も,液中に気泡が観察されるので,見分けづらいかもしれません.見分けるポイントをご説明します.
圧力が回復したとき,気泡がすぐに消える,またはすぐに非常に小さくなる.→定義1と考えられます.
圧力が回復しても,気泡が消えず,ある程度の大きさのまま浮き上がる.→定義2と考えられます.
定義1の現象で発生した気泡は,中身が液相が気相に変化して発生した気体です.液相が水だったら,気相は水蒸気です.圧力が元に戻ると,気相は速やかに液相に戻りますので,気泡はすぐに収縮します.
「速やかに」というのは,マイクロ秒のオーダーです.通常のビデオカメラで観察できるスピードではありません.一瞬で泡が消えたように見えるはずです.
定義2の現象は,泡が水中に残ります.泡の中身は空気で,水蒸気ではありません.ですので圧力が高くなっても,泡は消えずに残り,水面に向かって浮き上がります.
(圧力の高低によって体積は変動します.)
4.専門的な補足
少し専門的なことを補足します.
○定義1の「流れの中で」という言葉について
キャビテーション(定義1)は,流れが原因で圧力が低下し(ベルヌーイの定理に基づく),液相が気相になる現象を指します.
流れ以外の原因で圧力が下がり,それによって液相が気相になるのは,減圧沸騰と呼ばれる現象です.これはキャビテーションとは区別されます.
○定義1の場合に「またはすぐに非常に小さくなる」と補足してある理由
定義1の場合に,圧力が回復したとき,気泡がすぐに消える,またはすぐに非常に小さくなる,と述べました.この「またはすぐに非常に小さくなる」のところを説明しておきます.
キャビテーションが原因で水中に溶け込んでいるわずかな空気が集められて,小さな気泡が残る場合もあります.この場合,キャビテーションで発生する気泡に対して,残る気泡はごくごく小さいものです.
○自由表面の影響
定義2の場合は,自由表面が無ければ,気泡は発生しません.物体が水中に飛び込むときに空気を巻き込むから気泡が観察されるわけで,巻き込む空気がなければ気泡は観察されません.
以上,金野がかつて学んだ知識をもとに書いてみました.お役に立てば幸いです.
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