再び,「基礎から学ぶ工業力学」の話題です.
金野は力学編の第2章「力学の応用」と,第3章「剛体の力学」を担当しました.
これらの章は,第1章に比べると“工業”力学らしい内容になってはいます.しかし,世間で売られている通常の工業力学の本と比べると,工業的な内容はかなり少ないです.
たとえば,ベルトや輪軸,トラスは出てきません.ラミの定理も入れませんでした.振動も単振動しか扱っていません.せいぜいネジの効率の話が入っている程度です.
これは,力学の考え方をきちんと身につけることが何よりも大事だ,という著者らのポリシーから来ています.
ラミの定理などは,金野の考えでは「無駄な公式」の典型です.式としては美しいですが,3力が釣り合っているときだけしか使えません.力の釣り合いをきちんと学ばせるためには,むしろ邪魔だと思っています.
金野は工業力学の授業を8年間担当していますが,ラミの定理を教えたことは1回もありません.力の釣り合いをきちんと学んでくれれば,ラミの定理を覚える必要はありません.(そもそもラミの定理は三角関数の正弦定理に他ならない.)
それよりも力学の根本的な考え方を学び,身につけてほしいと願って,力学の問題に取り組むときの頭の使い方を,できるだけ詳しく書いたつもりです.
これは言い方を変えると,金野が力学をどのように理解し,どうやって問題を解いているかを,できるだけ詳らかにした,ということです.発見的な解法は避け,なるべく汎用な方法で,金野の思考の過程を紙面が許す範囲で詳しく説明しています.
発見的な解法を避けるというのは,その問題でのみ使える「うまい解き方」を排除している,という意味です.
たとえば水平梁に1点集中荷重がはたらいているとき,梁の支点の反力は内分の逆比から簡単に暗算できます.しかしそんな解き方を覚えても,力学の理解にはつながりません.
この教科書では,そのような解法にはまったく触れていません.力の釣り合い式とモーメントの式をきちんと立て,連立して解いています.「釣り合い」をきちんと考えることができる方が,公式をたくさん覚えるよりもはるかに重要だと確信しているからです.
この教科書では力学の考え方を愚直に基礎式から解き明かしています.かっこいい解き方は出てきませんが,力学の理解には役立つと思っています.
(まだネタがありますので,続きはまた後日.)
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