はじめにご注意申し上げます.
ここに述べることはすべて金野個人の,現時点(3月20日朝の時点)での見解です.金野が所属する団体の見解とは一切関係ありません.また,ここに書かれている内容に基づいて行動し,その結果として被害が出た場合に,金野は一切の責任を負いません.あくまで自己責任でご利用ください.
また,現在,福島第1原子力発電所の沈静化のために,生命の危機があるにもかかわらず懸命の努力をしていただいている皆様に,心から感謝と敬意を捧げます.以下では悪い結果を想定した議論もいたしますが,これは努力していただいている皆様の成功および安全を祈念しつつ書いているものであり,決してそのご努力を虚しく思って書くものではありません.この点を誤解なさらぬようお願いします.
さて,福島第1原子力発電所から放射性物質が飛散することが危惧されています.
現在(20日の朝)の時点では,3号機への放水による冷却は一定の効果を上げたとされていますが,たとえば4号機の使用済み核燃料貯蔵プールから大量の放射性物質が飛散する危険はまだ残されたままです.
これに対して,直ちに健康への影響はないとか,いや危ないから西へ逃げろとか,いろいろな意見をブログなどで目にしました.知り合いから質問されることもありました.
金野は放射能の専門家ではありませんが,ごく普通の技術者から見た視点として,思うところを書いてみます.
まず,○○kmより遠くは安全だからそこまで逃げろ,と言いきることはできないはずである,と考えます.
関西のある先生が「首都圏から避難が必要ないと言い切る専門家もいる。だが、この後、大量の放射性物質が飛んできた場合、この人はどう責任をとるのだろう。 」と疑問を投げかけ,「僕はネットで安全な西日本などへの「疎開」を呼びかけている。」と述べています.
諧謔的な混ぜっ返しを述べると,西日本に大量の放射性物質が飛んできた場合,この先生がどう責任を取るのか,金野は疑問です.その可能性はゼロではない.ただし下の方で述べるように,一般論として遠い方が放射性物質の飛散により被爆する可能性が低いことは間違いないと考えます.
「100%安全な場所まで避難地域に指定せよ」という意見も目にしましたが,そんな場所はありません.
たとえば昨日の報道によれば,アメリカ西海岸で微量ながら放射性物質が検出されており,日本から飛来したものと考えられています.
また,そもそも放射性物質だけが生命の危機ではないわけで,車に乗って移動するのも100%安全だとは言えないという意味で危険と言えば危険だし,電車や飛行機に乗って避難するのも同様です.ある特定の危険因子のみを忌避しようとするのは,他の危険因子を増やす可能性が高いです.
たとえば,極論ですが,放射性物質の摂取が怖いからと一切の食べ物,飲み物を取らずに長期間生活するのは,安全だと言えるでしょうか?
放射性物質の飛散のように,多くの複雑な因子が絡み合う現象に対して,未来に何が起こるかを断言できる人はいません.あくまで確率で語ることができるだけです.
そして,あくまで一般論ですが,今回のような移流拡散現象では,遠い方がより安全であること,つまり放射性物質が飛散したときに,近くよりも遠くの方が被爆する確率が相対的に低いことは,私のような素人技術者から見ても,間違いのない事実です.
ただし,それだけです.「どのぐらい遠ければ安全ですか」と言われれば「分からない」.
あるいは,もし金野が学生からこの質問をされたなら,金野は(教育的観点も含めて)「『安全』って何ですか,定義してください」と聞き返すことでしょう.一般の方からすればおそらく不愉快な返答ですが,それが分からなければ質問に答えられない.
もし「安全」の定義が「生命の危機が100%無いこと」であるなら,「そのような場所は地球上にも宇宙にも存在しません」というのが回答になります.
「安全」を「ただちに健康被害が出るほどの被爆を受けないこと」と定義した場合はどうか.
これに対する政府の現時点での見解が,半径20km以内は避難,20km~30kmの範囲は屋外退避,ということだと金野は解釈しています.
現時点までで報道されている放射線測定結果の情報によれば,半径30km地点で強い放射線を観測したがそれでも直ちに健康被害が出るほどではないそうですから,この範囲設定はおおよそ適切だったと思われます.
パニックを恐れて政府が正しい情報を隠しており,本当はもっと放射線測定値が高いから危険なのではないかと心配する人もいます.その場合はたとえば東京大学環境放射線情報などが参考になります.
ありとあらゆる測定値が嘘かもしれないと思うのでしたら,絶対値に基づく判断は無意味ですから,相対的に安全な地域に移動するしかない.つまり,とっとと日本から出て,できるだけ遠くへ行ってください.それしか対処方法はありません.
繰り返しになりますが,一般論として,放射性物質が飛散したときに,近くよりも遠くの方が被爆する可能性が相対的に低いのは間違いないです.
地球上で福島から最も遠い陸地は,アルゼンチンのVilla Gesell付近と思われます.円高気味だし,海外旅行もいいんじゃないですか.
金野は東京在住で,福島から250kmほど離れています.これは金野個人の事情などを含めた個人的な判断ですが,ここは十分に離れており,健康被害が出るほどの被爆を受けるリスクは金野が許容できる範囲である,と金野は判断しています.
繰り返しますが,あくまで金野個人の判断です.また一般論として,放射性物質が飛散したときに,近くよりも遠くの方が被爆する可能性が相対的に低い.
また,技術屋として「安全率2」というのをひとつの目安として考えています.現在政府は半径30km以内の地域に避難または屋内退避の指示を出しています.もし金野が,その2倍の半径60km以内の地域に住んでいるとしたら,より遠方への退避を検討すると思います.
ただしこれも金野の個人的な判断です.そもそも安全率というのは,念のために必要以上に安全な行動を取る指針に過ぎず,明確な根拠はありません.また,遠くに逃げたら「安全」になるわけではなく,あくまで被爆の確率が下がるだけです.
以上が,金野が今回の原発問題に対して,現時点(20日の朝の時点)で抱いている考えです.
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